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2008年9月

ルリ15

 月曜日の夜、いつものように夕食を作りながら仁さんを待った。私は、今夜は思い切って聞いてみようと思っていたの。土日はどこでどんな仕事をしているの?って。本当は聞いちゃいけないのかもしれない。聞かない方が良いのかもしれない。だって、仁さんが自分から話さないのだから。月曜日から金曜日まで、ウイークデイの夜は毎日私と食事をしてくれる。それで充分だと満足するべきなのかもしれない。それでも、マロンと二人きりで過ごす終末に、私は寂しさを覚えるようになってきていた。仁さんと知り合う前は、いつも一人っきりだったのに、おかしな私。

 「ただいま。ジューサー持って来たよ。」
「おかえりなさい。じゃあ、食事を終えたら、お野菜たっぷりの美味しい健康ジュースを作りましょうね。」
ジュースを飲みながら、明るく軽く聞いてみようと思っていた。目の前の笑顔が翳るようなことには、決してしたくはなかった。

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ルリ14

 頬をなでる温かい感触に目を覚ました。見るとマロンが私の枕元で小さく丸くなっていた。仁さんは夜中までパソコンの前にいて、何やら熱心に検索していた。いったい何時に寝るのかしらと思いながら、いつの間にか私は眠ってしまったようだ。
 まだ空が明るくなる前に、仁さんの携帯電話が鳴っていたような気がする。話し声は聞こえなかったので、部屋の外で話していたのかも知れない。

 もう、土日の仕事に出かけたのかしら。寝室に置かれたテレビのスイッチを入れ、私はいつまでもベッドから出られずにいた。
「今度はジューサーを持ってくるね。」
と言った、夕べの彼の言葉を思い出しながら、飲みやすくて栄養満点の野菜ジュースを作ろうと、ぼんやり考えていた。

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ルリ13

 高校を卒業して上京して就職。会社での単純な仕事にも一人暮らしにも慣れたけれど、東京で友だちを作ることは難しかったわ。ファッションの話も映画の話も恋人の話も、どれも興味があったのよ。けれども、どんなふうに言葉を挟んだらいいのかわからなくて、都会の女の子たちとうまく話ができなかった。そのうちに私は、「無口で地味な子」というレッテルを貼られて、職場で独りポツンとしていても、誰も気にもとめてくれなくなっていったわ。正直、独りの方が気が楽だったしそんなに辛いことではなかったわ。それでも、たまには仕事帰りに一緒に食事をしたりショッピングをしたり、そんなお友だちは欲しかった。

 私の寝室に、そんなに新しくない小さなテレビとビデオデッキをセッティングしている仁さんの背中。この背中が、私の東京での生活を変えてくれる。そう信じたかった。
 足下にまとわりついたマロンを大切に抱きかかえて、何度も頭をなでてあげた。

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