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ルリ18

 出勤の電車に揺られながら、私はなぜか不安を感じていた。幸せな朝を迎えたはずなのに、どうしてかしら。
 仕事に間に合わなくなるといけないからと仁さんを起こすと、彼はバタバタと支度をして出かけていった。いってきますの代わりに、私の頬に軽くキスをしていったけれど、唇を寄せる前の瞬時、彼の瞳は幸せや喜びを語ってはいなかった。どちらかと言えば、何か計算めいたような。ただの気のせいだといいのだけれど。「忘れ物?」と聞くと「いや」と、いつものとびきりの笑顔に戻って仕事に向かった。
 仕事。そう、彼の平日の仕事も私は知らない。土日は何をしているのか、夕べの私の質問にも、結局彼は応えなかった。
 電車の振動に、私の心まで揺れ動いた。

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