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明来20

 私の狭い部屋には、豚汁のにおいが充満していた。三杯目のまさしさんのお代わりをよそりながら、内心、ちょっと驚いていた。
「そんなに豚汁好きなんですか?」
「うん。好きだし、独り暮らしだと、なかなかこういうの食べられないから。」
「独り暮らしなんですか?」
「うん。」
そういえば、私はまさしさんのことを何も知らなかった。池袋から私鉄に乗り換えて数駅というのは、彼の独り暮らしのお部屋なのかしら。聞き返そうとしたけれど、彼が自分から話してくれるのを待ちたいとなぜか思った。
「今夜はゆっくりといろいろな話がしたいな~。泊まっていってもいい?」
「え……。明日は日曜だけど、午後からバイトが入っているんですが……。」
「あ、じゃあ、明来さんがバイトに行くとき、一緒に出るから。バイト、土日もやっているの?」
「はい、どちらかは。」
「音楽活動するなら土日でしょ。バイトが入っていると、きついよね。」
「そうなったら、土日のバイトは考えます。」
なるほど、と思った。趣味を持つということは、時間をうまく使わなくちゃいけないんだ。今夜、泊まってゆく。和哉の部屋にあった2本の歯ブラシの意味が、今になって鮮明に私の中に理由付けられた。

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