ブログ小説

ルリ20

 たいして欲しくもない物を、インターネットで買うことが多くなった。服やバッグや、自分を着飾るための品物が欲しくないと言えば嘘になる。でも、私にはオシャレをして出かける場所などないのだから、そういった物は必要ないのだ。

 仁さんと、デートしてみたい。テーマパーク、映画、素敵なレストランで食事するだけでもいい。土日、出かけなくてもよい日はないのかしら?
「ミャー」
そっか。私たちが二人で出掛けてしまったら、マロンがひとりぼっちになってしまうわね。やっぱりそれはできないわね。仁さんの好きな食べ物やマロンの餌をたくさん買いましょう。仁さんがカードの番号を教えてくれているので、助かるわ。

 ……。今度、訊いてみようかしら。マロンも連れて出掛けてみないかって。

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ルリ19

 「ルリにきちんと話せるようになるには、もう少し時間がかかるんだ。」
「まだ夢の途中。まだまだ…まだ。」
「もう少し待ってくれない?もう少し格好がついたら、きちんと話すから。」

 何の説明にもなっていないし、ひとつも理解できない。
 私の笑顔が曇ったことに気付いた仁さんは、土日の自分のことを、そう語った。納得なんかできるわけが無かったけれど、それ以上の追求はできなかった。「もう少し」という時間がどれくらいなのかは想像もつかないけれど、「待つ時間」があることが私にとって最大の救いになっていることは判っていた。

 マロンを抱きしめ、いつものように仁さんを見送る土曜日の朝。スッキリしない気持ちを晴らす手段は、ネットショッピングになっていた。
 



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明来22

 渋谷のデパ地下でバイトしている私は、今日はあまり街に出たくなかった。だって、風邪で休んでいることになっているわけだから。
「パソコン、無いの?」
「買おうと思っているんです。必要に迫られているんですが、何を買ったらいいのか判らなくて。」
「じゃあ、見てあげようか?」
「パソコンに詳しいんですか?」
「いちおう、IT関連の仕事してるから。」
「そうなんですか!じゃあ、お願いします。」

 まさしさんの仕事のことが少しわかり、なぜだかほっとした。会社のこととかは詳しくきかなかったものの、何をしている人なのかぐらいは知っておきたかった。なるほど、パソコンにはかなり詳しいようだった。私の狭い部屋には、やはりノートパソコンが便利であろうということになり、手頃な物を選んでくれた。とっても欲しかったので、嬉しかった。
 一度部屋に戻り、まさしさんはインターネットの接続をしてくれた。
「音楽するにも、パソコンは必需品だよ。」
と、夕食の後帰っていった。

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明来21

 独り暮らしの私の部屋には、一組の蒲団しかない。狭い寝床に二人で過ごす一夜は寝苦しく、何だか寝不足を感じる。
 ゆっくり話したいからと言った昨日の夕食後も、私に質問するばかりで、まさしさんはあまり自分のことを話さなかった。それでも、ご両親は既に亡くなられているということ、妹さんが一人いらっしゃるが、音信不通だということを話してくれた。そして、高校生の時からドラムを始め、今までにたくさんのバンド歴があるということ、長く続けられるバンドがやりたいということも話してくれた。ドラマーと聞いて、また和哉を思い出してしまった。
 「バイト、休んだら?」
時間になったので、そっと蒲団から出て支度を始めた私に気づいたのか、まさしさんが言った。
「う~ん。」
少し考えたが思考は働かず、
「そうね。風邪ひいたことにします。」
そう返事をしていた。

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明来20

 私の狭い部屋には、豚汁のにおいが充満していた。三杯目のまさしさんのお代わりをよそりながら、内心、ちょっと驚いていた。
「そんなに豚汁好きなんですか?」
「うん。好きだし、独り暮らしだと、なかなかこういうの食べられないから。」
「独り暮らしなんですか?」
「うん。」
そういえば、私はまさしさんのことを何も知らなかった。池袋から私鉄に乗り換えて数駅というのは、彼の独り暮らしのお部屋なのかしら。聞き返そうとしたけれど、彼が自分から話してくれるのを待ちたいとなぜか思った。
「今夜はゆっくりといろいろな話がしたいな~。泊まっていってもいい?」
「え……。明日は日曜だけど、午後からバイトが入っているんですが……。」
「あ、じゃあ、明来さんがバイトに行くとき、一緒に出るから。バイト、土日もやっているの?」
「はい、どちらかは。」
「音楽活動するなら土日でしょ。バイトが入っていると、きついよね。」
「そうなったら、土日のバイトは考えます。」
なるほど、と思った。趣味を持つということは、時間をうまく使わなくちゃいけないんだ。今夜、泊まってゆく。和哉の部屋にあった2本の歯ブラシの意味が、今になって鮮明に私の中に理由付けられた。

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明来19

 「今日は、胃の調子が悪くて…、ごめんなさい。トンカツはまたこの次でいいかな?」
 10分遅れて待ち合わせ場所に来るなり、まさしさんは言った。
「大丈夫ですか?じゃあ、何かさっぱりした物食べますか?」
内心、トンカツには縁がないのかなと思いながら私が聞くと、
「う~ん、明来さんの手料理が食べたいな。」
と、子どもみたいな笑顔で応えた。
「美味しい豚汁ですか。」
「うん。」
「豚汁も脂っこいですよ、大丈夫ですか?」
「明来さんの手料理だったら大丈夫!」

 私のアパートは渋谷から私鉄に乗り換えて20分。その時間が、いつもよりとても短く感じた。大学生になって独り暮らしを始めてから、男の人を部屋に招くのは初めてだ。なぜだか、和哉のアパートが脳裏を横切った。  

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ルリ18

 出勤の電車に揺られながら、私はなぜか不安を感じていた。幸せな朝を迎えたはずなのに、どうしてかしら。
 仕事に間に合わなくなるといけないからと仁さんを起こすと、彼はバタバタと支度をして出かけていった。いってきますの代わりに、私の頬に軽くキスをしていったけれど、唇を寄せる前の瞬時、彼の瞳は幸せや喜びを語ってはいなかった。どちらかと言えば、何か計算めいたような。ただの気のせいだといいのだけれど。「忘れ物?」と聞くと「いや」と、いつものとびきりの笑顔に戻って仕事に向かった。
 仕事。そう、彼の平日の仕事も私は知らない。土日は何をしているのか、夕べの私の質問にも、結局彼は応えなかった。
 電車の振動に、私の心まで揺れ動いた。

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ルリ17

 東の窓から差し込む朝日を頬に感じ、私は目を覚ました。寝ぞうの良い私は、自分のシングルベッドを狭いと思ったことはなかったけれど、今朝は少し窮屈さを感じていた。私の右側でまだ眠っている仁さんを起こさないように、そっと起きあがってテレビのスイッチを入れた。
「おはよう、マロン。」
一緒にベッドに入れなかったマロンが、テレビの前で丸くなっていた。
 6時30分。あと少しだけベッドに居よう。目覚めたときに、誰かが隣にいる幸せ。ぼんやりとテレビを眺めながらベッドでまどろむ幸せ。些細なことかも知れないけれど、私にとっては初めて味わう幸せだった。仁さんが起きたら、私はどんな顔をすればいいのかしら。

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ルリ16

 「ねえ、聞いてもいい?」
「なに?」
「土日は、どんなお仕事しているの?」
果物もたくさん入り、ハチミツで甘くした手作りジュースをマドラーでかき混ぜながら、仁さんとは目を合わせずに軽快に質問してみた。
「どうしてそんなこと聞くの?」
「どうして…って、仁さんのこと、もっと知りたかったから…。いけないかしら?」
「いけなくないよ。ジュース、美味しいね。……今夜は、この部屋に泊まっていってもいい?」
「うん。」
「明日も仕事だし、早めに寝ようか。」
「うん。」
小さくうなづいて、もう一口ジュースを飲んだ。甘かったはずのジュースの味がわからなくなっていた。

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ルリ15

 月曜日の夜、いつものように夕食を作りながら仁さんを待った。私は、今夜は思い切って聞いてみようと思っていたの。土日はどこでどんな仕事をしているの?って。本当は聞いちゃいけないのかもしれない。聞かない方が良いのかもしれない。だって、仁さんが自分から話さないのだから。月曜日から金曜日まで、ウイークデイの夜は毎日私と食事をしてくれる。それで充分だと満足するべきなのかもしれない。それでも、マロンと二人きりで過ごす終末に、私は寂しさを覚えるようになってきていた。仁さんと知り合う前は、いつも一人っきりだったのに、おかしな私。

 「ただいま。ジューサー持って来たよ。」
「おかえりなさい。じゃあ、食事を終えたら、お野菜たっぷりの美味しい健康ジュースを作りましょうね。」
ジュースを飲みながら、明るく軽く聞いてみようと思っていた。目の前の笑顔が翳るようなことには、決してしたくはなかった。

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